売上をもっと効率に上げる方法はないか・・・新規顧客も欲しいけれど、時間もお金もかかりすぎる。
というお悩みを抱えている方へ。
年々、広告費は上がり、顧客獲得単価は上がる一方です。また、コロナ禍のように収束の予測がつかないことも起こるようになり、新規顧客への面会を断られ続けるケースも頻発するようになりました。
新規顧客へのアプローチをやめるわけにはいきませんが、全体の売上をもう少し効率よく上げたいときには既存顧客へ「アップセル」という手法を使うことができます。
そこで、本記事では初めて「アップセル」という言葉を聞いた初心者の方向けに、意味やメリット、例などを簡単に解説します。
アップセルとは
アップセルと聞くと、カタカナ用語で分かりづらいですね。英語で表記するとUpsellingとなります。「上位のセールスかな?」というイメージが湧けば、半分正解です。
アップセルとは、簡単に説明すると、より単価の高い商品やサービスを購入してもらうという意味です。
アップセルを行うと、売上はもちろん、効率の良い利益アップにつなげることができます。
本項ではまずアップセルの基礎知識として、次の3つについて解説します。
・アップセルの効果
・アップセルを行うメリット
・アップセルの具体例
アップセルを行うと顧客単価UPできる
アメリカのマーケター、ジェイ・エイブラハムの有名な売上方程式によると、次のように表されます。
それぞれの要素が大きくなれば、必然的に売上額は増えますね。アップセルとは、上記3つの要素のうち、「単価」を上げるためのひとつの手法です。
売上を増やすことを考えると、ついつい新規顧客獲得を考えがちですが、既存顧客の単価を上げることでも実現します。
購入を決めた顧客や既存顧客にアップグレードしてもらうようにお勧めし、購入してもらうことで、売上額をアップさせることができます。
とはいえ、行き当たりばったりでアップセルを行うと押し売りのようになってしまい、逆効果の場合もあります。
商品設計の段階でアップセルを含めて考えておき、どのような顧客層にどのタイミングでどうセールスするのかまでプランニングしておくことが大切です。
アップセルの3つのメリット
アップセルを取り入れるメリットは、大きく次の3つです。
1)顧客単価を上げられる
顧客単価が上がると、売上アップに直結します。
単価20万のものを50万にアップグレードしてもらえれば、単純に売上は30万円アップします。
また、昨今流行のサブスクリプションの場合、アップグレードの金額がたとえ数千円だったとしても、数年以上、長く使ってもらうことで、ライフタイムバリュー(生涯価値)を大きくすることができます。
2)新規顧客獲得よりもコストがかからない
アップセルは購入を決めた顧客や、既存顧客へお勧めするので、新規顧客獲得のように多額のコストをかけずに売上を伸ばせるという利点があります。
広告費などの高騰により、新規顧客獲得価格はどんどん上がっています。既存顧客にリピード販売するよりも5倍、10倍のコストがかかると言われているので、アップセルを行うことでコストをかけずに売上アップを実現することができることはとても有用な手法であると言えるでしょう。
3)顧客満足度を上げられる
アップセルは顧客により高額な商品、サービスを提供することです。つまり、顧客が手に入れられる理想の未来がより良いものになるということを意味しています。
アップセルを行うことで、顧客がその存在にすら気づいていなかった、ずっと魅力的な未来を提供できるわけですから、顧客満足度向上につながるのです。
売り手の義務は買い手のために一番良い体験を提供すること。アップセルはそのひとつの手段として有効です。
アップセルの具体例
アップセルの例はあなたの身の回りにたくさんあります。一例をあげますと・・・
【例】
・新車を買うことを決めた顧客に標準装備よりもグレードの高い特別仕様車を買ってもらう
・月額課金のネットサービスをより高速でサポートが充実した高額プランにアップグレードしてもらう
・飛行機のエコノミー席をビジネスやファーストクラスにアップグレードしてもらう
・レストランで輸入品の安価なステーキから高級和牛ステーキにしてもらう
・スポーツジムでのパーソナルトレーニングを弟子の認定講師からカリスマトレーナーのコースに切り替えてもらう
など
「アップセル」という言葉を知らなくても、無意識でアップセルを今まで利用しているケースがあるのではないでしょうか。
クロスセル、ダウンセルとの違い
アップセルの例を聞いていると、「こんなケースはアップセル?」と分からなくなることもあります。
たとえば、
・標準装備の新車を買うことを決めた顧客に格好いいホイールやドライブレコーダーの設置をお勧めする
・レストランで輸入品の安価なステーキと一緒に、サラダとデザートの追加をお勧めする
一見、アップセルのような感じがしますが、これらのケースは関連商品の追加ですので、「クロスセル」と呼ばれます。
アップセルもクロスセルも顧客単価を上げるという目的は同じです。
反対に通常の商品やサービスをお勧めして「いらない」と断られた場合、そのまま諦めてしまうのでは、売上はゼロになってしまいます。
そこで、さらに購入しやすい価格帯のものをお勧めして、少しでも支払ってもらうようにすることを「ダウンセル」と呼びます。
50万円単価のサービスは断られたけれど、3万円のものなら買ってくれることもあります。0円と3万円の差はとても大きいのです。3万円のものを買ってもらい、よい体験をしてもらえれば、またアップセルを行うことも可能です。
アップセルと同じように、クロスセルとダウンセルについても、あらかじめセールス設計に組み込んでおくことが大切です。
クロスセルとダウンセルについて、詳しくは下記をご覧ください。
【クロスセルとは】初心者向けに意味・メリット・例を超簡単6分で解説
【ダウンセルとは】初心者向けに意味・メリット・例を超簡単5分で解説
アップセルを実施するために必要な2つのこと
アップセルを解説すると、「簡単に売上アップができる方法」として、魅力的に感じるかもしれません。
ただ、先にもお伝えしたとおり、誰彼かまわずにアップセルを行うと、押し売りのような印象を与えてしまい、顧客流出につながってしまう可能性もあります。
再現性、持続性のあるアップセルを実施するために必要なことを大きく2つお伝えします。
今の状態からすぐに完璧なアップセルを実現することは難しいかもしれませんが、効率的な売上・利益アップのためにも、コツコツと取り組んでください。
顧客教育を行うこと
セールスばかりに偏りすぎず、日頃から顧客との接触を頻繁に行い、関係性構築と顧客教育を図っておくことが大切です。
顧客がどのような悩み・課題を抱え、どのような理想を手に入れたいと考えているのかを情報収集しておく必要があります。
その上で顧客にとって価値ある情報の提供を行い、商品やサービスの必要性を伝え、信頼性を築いていきます。この土台があってこそ、いざアップセルをしたときに購入してもらうことができるのです。
顧客管理を行っていること
アップセルを効果的に行うためにも、顧客管理が必須になってきます。顧客を見込客、新規顧客、既存顧客に分けて、購買履歴などを管理することが必要になります。そのためには数値測定・分析、テスト、仮説立て、検証、改善を欠かすことができません。
アップセルは単価アップの手段のひとつです。他にも手段はいろいろありますから、売上アップの戦略立ての上、適切なタイミングと手段で適切なものを適切な顧客にセールスしていく必要があります。
また、アップセルをスムーズに顧客に受け入れてもらうためにも、魅力的なオファーも用意しましょう。期間限定の無料お試し、割引やプレゼント、サポートをつけるなど特典を工夫することができます。顧客教育の中でも触れましたが、こうした工夫は日頃のまめな顧客への接触の土台ができあがっていて初めて効力を発揮するのです。
ピンポイントでアップセルをすれば売上が上がると安易に考えるのではなく、再現性、持続性のある仕組みを構築し、その中でどのようにアップセルを活かせるのかを考えていくことが大切です。
まとめ
以上、簡単にアップセルについて初心者の方向けに解説しました。
より単価の高いものにアップグレードしてもらうのがアップセルです。アップセルは顧客単価を上げるためのひとつの手段で、効率的に売上・利益アップにつなげることができます。
そのためには、顧客教育、顧客管理が必須です。アップセルは誰でもいいので高いものを売って手っ取り早く売上を上げられる魔法の方法ではありません。
適切なタイミングで適切な顧客に適切なものを売る必要があるため、現状分析と先を見通した戦略立てを行った上で、コツコツと積み上げていくようにしましょう。